結核予防会 島尾 忠男
ネパール・スタディツアーを始めて、1998年の11月で早くも5回目を迎えた。始めるきっかけは、1993年12月からネパールの結核予防会(以下、NATA)との3年間の共同事業として始めた、ルンビニ地区でのモデル結核対策活動(ルンビニ・プロジェクト)であった。従来ネパール王国の結核対策への協力は、国際協力事業団(JICA)の行う技術協力に対して、結核研究所が中心となって行ってきたものであったが、今後の複十字シール募金活動を考える場合に、シール募金の使途を国際協力への支出に重点を置くべきであり、そのためには予防会独自の国際協力を強化する必要があると考えて、始めたのがこの事業である。
ルンビニという地区を選んだのは、当時国の結核対策プログラムが行われておらず、かつこの地が釈迦の誕生の地で、日本人にも馴染みが深いからであり、平素の業務はルンビニ・ヘルス・ポスト(後にこのプロジェクトの存在により、ヘルス・センターに昇格)で、最初はNATAのルパンデヒ支部の職員を中心に、漸次現地の職員を取り込んで行うようになりつつある。最初の3年間の実績がよかったので協力は延長され、国がDOTS戦略を採用したのに合わせて、同様な方式で第2期の事業が進行中である。日本とあまりにも背景が違うネパールでの協力の実際は、現地で見てもらわないと本当の理解は得られないであろう、また結核予防婦人会の幹部の方に現場を見ていただければ、シール募金への協力も一層強化されようと考えて企画したのが、このスタディツアーである。
5年間の実績
この5年間に、合わせて33名の婦人会の方が参加され、また予防会本部の職員で参加した者が10名、これに本部や結核研究所からは引率者と世話役、通訳、複十字病院からは消化器科の医師が健康管理担当として、計4名が毎年同行しており、この5年間に延べ63名がこのツアーでネパールを訪問していることになる。
スケジュールは、首都カトマンズでのNATA本部訪問、大使館やJICA事務所への表敬、国立結核センターの見学に始まり、西部地域のポカラへ移って、そこで日本が協力している西部地域結核センターの見学とNATAカスキー支部の方々との懇談、さらにルンビニへ移動して、ヘルス・センターでの実際の患者の治療状況の視察とNATAルパンデヒ支部の方々との懇談など、結構多忙な日程である。その間に観光やショッピングも組み込まれ、圧巻はサリーの購入とその着付け教室、そして先方を招待してのレセプションで、実際にサリーを着用しての出席である。ネパールのシンボルであるヒマラヤの霊峰がよく見られ、寒暖が極度でない時期ということを考えると、11月がツアーを行うには最も良い時期であろう。参加された方々からは、貴重な、ふつうの海外旅行ではできない経験だったという感想を寄せていただいている。
遭遇する問題点
主催者として最も気を遣うのは参加者の健康管理である。水はミネラル・ウォーターを用意して使っていただいているが、それでも毎年何人かが下痢をしてしまい、健康管理医が活躍することになる。幸いに今まで、途中で脱落するほどの状態にはなっていないが、旅の間の下痢が不愉快なことはいうまでもない。幸いに今年から宿泊先を経営者の奥さんが日本人のホテルに変え、朝食がお粥を含む和食となってからは、被害が激減した。複十字病院の消化器科の先生方に、平素日本では遭遇しない病気の診療や、現地の医療事情を見てもらうのも、予防会としては大きなプラスとなっている。本部からの世話役と通訳は、最近はすべて女性職員が担当しているが、婦人会員対象のスタディツアーにふさわしい役割を果たして参加者全員から感謝されている。
現地にはJICAの結核対策技術協力プロジェクトに予防会の職員がおり、大使館やJICAとの交流も深いことが、現地での円滑な受け入れに一役買っている。またNATAとの間には、この20数年間に培ってきた密接な関係があり、ネパール側関係者が毎年プロジェクトの調整のために来日して、良い人間関係ができていることが、ネパール国内各地での親密な交流の基礎となっている。
また参加者が、日本各地の婦人会の幹部であり、良識の下にまとまった団体行動をとってくださったことも、ツアーの成功に大きく寄与している。今後の方向
世界の結核の蔓延状況、特に途上国の状態を考えると、国としての事業への協力の他に、予防会としても独自の協力をさらに強化したい。その基礎となるのは複十字シール募金運動による寄付金であり、その増加には結核予防婦人会の協力の強化が必須である。参加者からは、「百聞は一見にしかず」という感想が寄せられているが、正にそのとおりで、現場を見ることによって協力強化の必要性をよく理解していただければ、それが寄付金の増加、活動の強化につながってくる。ぜひより多くの婦人会の方に参加していただきたいし、余裕があれば本支部の職員の有志にも参加してもらいたいのが我々の願いである。
訪問先としては、将来はネパールの他に、現在協力プロジェクトが進行中のインドネシアも候補となりうるであろうが、そのためにはインドネシア結核予防会との関係を今一層密接にする必要がある。
複十字シール運動の強化を願いながら始めたネパールへのスタディツアーを、この5年間、大きな事故もなく続けることができた。このツアーを支えて下さった関係者の方々に感謝するとともに、将来より多くの人々が参加して、それが予防会独自の国際協力の強化につながることを期待したい。