• トップページ
  • 結核対策と予防会のあゆみ
  • 結核の歴史
  • 今後の結核対策
  • 1939-1945
  • 1939-1945
  • 1946-1950
  • 1951-1961
  • 1962-1973
  • 1974-2006
  • 2006.12-
  • 複十字シール大図鑑
  • 機関誌「複十字」バックナンバー
  • 結核予防全国大会開催記録
  • 結核アーカイブス
  • 過去の取り組み

結核対策と予防会のあゆみ

今後の結核対策

1.状況は大きく変わった

1951(昭和26)年から半世紀以上にわたって、わが国の結核対策の基本法であった結核予防法が成立した頃、結核まん延状況は酷いものであった。例えば年齢階級別に結核既感染率を見ると、図7に見るように、1950年には20歳になるまでに実に54.8%の人が結核に感染し、50歳では86.7%が感染していた。1980年になっても20歳までに7.8%が感染し、50歳では64.9%が感染していた。ところが2010年には、20歳までに感染する人は1.4%にすぎず、50歳でも9.9%であると予測されている。40歳代以下の人では、95%以上が結核感染を受けていないのである。

図7

見方を変えて、今年日本で生まれた子供が70歳まで生きたとして、何%結核感染を受けるかを計算してみると、1.4%程度となり、98.6%は感染を受けない。ただし、この間、外国人の結核患者が増えたり、HIV合併結核が爆発的に増えたりすれば状況は変わるが、日本にいる限り何時何処で結核の感染を受けるか分からない、という時代とは全く変わったことは確かである。

▲ページ上部に戻る

2.BCG接種政策

結核感染が少なくなれば、BCG接種の利益は少なくなる。従って、かつてはBCG接種を熱心に勧めていた国でも、今では中止した国も少なくない。スウェーデン・チェコ・フィンランド・ドイツ・イギリスなどである。これに、初めからBCG接種を導入しなかった米国やオランダを加えると、BCG接種を行っていない先進国のほうが多い。

わが国もそろそろ中止を考えるべき時が近づいている。問題は、何時、どのような条件が揃った地域から、どのようにして中止に踏み切るか、ハイリスクとして接種を続けるグループは何か、などである。既に中止した先進国から多くの報告が出ているので、これらを参考に、早急に検討することが望まれる。

BCG接種を中止すれば、逆に強化しなければならない施策も少なくない。

  • 妊婦の結核発病への注意
  • 妊娠7ヵ月時の胸部検診
  • 乳幼児結核感染・発病などへの健康教育
  • 乳幼児のツ反応検査(リスクに応じて時期を決める)
  • 患者家族の乳幼児・小児の接触者健診の励行
  • BCG接種を中止すればツ反応を感染診断に生かせるため、ツ反応検査を充分に利用すること

などである。

▲ページ上部に戻る

3.より積極的な潜在性結核感染症治療の適用を

BCG接種が中止されれば、ツ反応検査による感染診断が現在よりずっと正確になり、必要に応じてクォンテイフェロン®TB-2Gも利用できるので、潜在性結核感染症の治療は、従来に比し遥かに正確に実施できる。(1)したがって、積極的実施がまず必要である。(2)免疫抑制剤使用時、HIV感染例についてもさらに積極的に行う。(3)高まん延国から入国した感染者にも適用するなどである。

▲ページ上部に戻る

4.胸部X線定期検査

WHOは、1964年から「有症状者の喀痰塗抹検査」を積極的に実施して、患者発見に努めるべきことを強調し、全員を対象とした胸部X線検査の中止を呼びかけた。当時は、ほとんどの先進国で胸部X線検診車による健康診断が日常行われていたので、この勧告は世界の結核医を動転させた。世界中で議論が巻き起こったが、1975年頃までにほとんどの先進国で全員を対象とする胸部線検査は中止され、特定のグループの検診に移行していった。

わが国でも学校健診のいわゆる「間引き」などが進められ、結核健診は高齢者などに絞られてきたが、労働安全衛生法による健診などX線検査はまだ突出して多い。小中学生の結核健診ではX線検査を廃止し、問診票を活用しているが、そのあり方も検討が望まれよう。

当分の間は(1)65歳以上の高齢者の定期健診、(2)デインジャー・グループ健診、(3)さらに自治体が独自に実施している住所不定者健診などは当分続くだろうが、(4)「咳が2週間以上続く有症状者のX線検査」、(5)不定愁訴が続く高齢者の健診、(6)医療機関での「診断の遅れ」の防止などに日常活動の重点を移していくことが望まれよう。

▲ページ上部に戻る

5.長期入院

わが国の結核医療は、伝統的に公立病院での療養所治療が中心になって行われてきた。化学療法がない時代には、必然的に長期療養が必要だったし、化学療法が使えるようになっても、治療成績・住宅事情など諸般の事情から諸外国に比べると、入院期間は長い傾向にあった。これは現在にも影響している。この結果として低医療費、不採算医療、病床占有率低下、専門医師の不足など、結核医療をめぐるさまざまな問題が山積し、「結核医療の崩壊」を心配する意見が出てくるほどである。

欧米諸国では、大部分の国で1970年代に結核患者を「一般病院の陰圧室での部屋単位の収容」に切り替えた。これにより(1)一般病院の医師の結核に関する関心が高まり、(2)入院期間は極端に短縮し、(3)患者は遠い療養所に入院せずに済み、(4)合併症を持つ結核患者の治療が容易になるなどの利益が見られた。(5) わが国でも、地域によっては結核病棟の維持が既に困難になり、(6)結核に関心を持つ医師の確保が難しい。(7)特にMDR-TB、XDR-TB、あるいは合併症の多い高齢結核患者の治療に難渋している。(8)結局、「一般病院の陰圧病室単位での結核患者の収容」の方向への改革が望まれる。

▲ページ上部に戻る

6.サーベイランスの強化

わが国は保健所・自治体・結核研究所・国をコンピューターで結んで、世界に冠たる充実した結核サーベイランスシステムを持ち、結核疫学情報の詳細な分析が行われている。多くの先進国の状況を見ると、罹患率が10万対10に近くなる頃から、移民・難民の結核や特定のグループの罹患率が高くなるなどの、結核疫学の大きな変動が見られている。(1)わが国でも、今後は疫学的変動の注意深い観察と対応策の樹立が必要である。(2)これにはMDR-TBなど、結核菌サーベイランス(結核菌バンク)の活動も含まれる。(3)また、大都市などでは、思わぬところでの結核感染が発生するので、VNTR分析など、分子疫学の確立も必要である。

▲ページ上部に戻る

7.人材育成

今後は結核療養所の維持が難しくなり、結核単科の専門家の育成はできない。保健所でも同様である。一方、結核集団感染対策・接触者健診・MDR・XDR患者対策など、難しい結核対策は後を絶たないだろう。(1)このため医師・保健師・検査技師などの専門家の育成は不可欠であり、(2)これを維持するためには、広い人材を対象とした短期の研修を繰り返すことも必要である。(3)世界の結核を視野に入れた国際協力を考えれば、人材育成はさらに重要となる。(4)これらの活動に理解を示す、結核予防婦人会のような一般の理解の推進も望まれる。(5)まさに「人材育成は結核対策の柱」なのである。

▲ページ上部に戻る