結核について

けっかくは日本の重大な感染症です。

明治時代から昭和20年代までの長い間、「国民病」「亡国病」と恐れられた結核も、国をあげて予防や治療に取り組み死亡率は往時の百分の一以下にまで激減しました。

1980年代になって、都市化の進展や高まん延であった時代に感染した人々が高齢化し発病するようになったため、結核罹患率低下が鈍化しました。1999年には「結核緊急事態宣言」が発せられ、その後罹患率低下はやや回復しました。

欧米の先進国は結核罹患率が人口10万対10以下の低まん延国になっているのに対して、日本は2017年に人口10万人あたり13.3と「中まん延国」であり、16,789人の患者が報告されています。一般の人のみらなず医療従事者も結核への関心が低下しているために発見が遅れる場合があり、集団感染の原因になっています。大半を占める高齢患者は典型的な症状がないために診断が遅れることがあり、重篤な合併症を持っているために、しばしば予後不良になります。近年は若年者を中心に外国出生の患者が増加しています。結核は今も日本の最大級の感染症です。

人口10万人あたり10以下の「低まん延国」を目指し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの目標達成のため、様々な取り組みが行われています。

結核を知ることが予防への第一歩。早期発見・早期治療は本人の重症化を防ぐためだけではなく、大切な家族や職場等への感染の拡大を防ぐためにも重要です。

  • 諸外国と日本の結核届出率
  • 高齢患者割合の年次推移

結核ってどんな病気?

結核

結核とは、「結核菌」という細菌による慢性感染症です。患者のくしゃみや咳の際に体外に排出された結核菌は微細な大きさのため、なかなか落下せず空気中を漂っています。この結核菌を肺の奥深くまで吸い込んで、小さな病変ができて、時には肺の入り口のリンパ節が腫れた段階で感染が成立したことになります。感染が成立しても、多くの場合は人の免疫の力で抑えられますが、吸い込んだ菌が非常に多い場合や、免疫が低下している場合には「結核症」に進むことになります。

当初できる細い気管支の先端の病変(散布性病変)が集まって組織が融けて空洞(穴が空いた状態)になります。ここから結核菌は気管支を通って肺の他の部分に広がり、リンパ流や血管内に入って全身に広がっていきます。最後には肺の組織の大部分が破壊されて呼吸困難や、他の臓器不全を起こして生命の危機を招くことになります。

結核は肺だけとは限りません

結核は肺以外にも病変を作ることがあります。冒される臓器としてはリンパ節が最も多く、特に多いのが首の脇が腫れるもので、昔は「るいれき」と呼ばれていました。また骨や関節にもできますが、背骨にできるのが「脊椎カリエス」です。次に腎臓(腎結核)が多く見られます。腎結核は膀胱などを巻き込むこともよくあります。

このほか結核は喉頭、腸、腹膜、また眼や耳、皮膚、生殖器にまで拡がることもあり、いちばん怖いのは脳にくる場合です。結核菌が血管を通って全身にばらまかれ(このような状態が「粟粒結核」です)、脳を包んでいる膜(髄膜)にたどり着き、そこに病巣を作ることによって起こります(結核性髄膜炎)。今日では粟粒結核は早く発見すればかなり助かりますが、髄膜炎では適切な治療が遅れると、3分の1近くが命を落とし、治っても高い確率で脳に重い後遺症が残ってしまいます。

結核症の全身への進展(模式概念図)

効果の高い化学療法

結核を、薬で退治することは人類の長い間の夢でした。1944年、ワックスマンが放線菌から作り出したストレプトマイシンはその劇的な効果で、まさに「魔法の弾丸」と呼ばれるにふさわしいものでしたが、一つの薬剤による治療では、やがて使用した薬剤が効かない耐性菌を作ることを知ることになりました。

続いてパス(PAS)、イソニアジド(INH)などが登場し、結核の治療は複数の薬剤の組み合わせによる化学療法で行うことが確立しました。以後も次々と開発され、現在「抗結核薬」として広く認められているものは10種類を越えます。

現在の標準的な治療はリファンピシン、イソニアジドという2種類を軸に最初4剤、続いて2~3剤を合計6カ月間使うものです。

薬名 形態/主な副作用

イソニアジド(INH)

イソニアジド
(INH)

  • 【形態】
    白い小さな錠剤
  • 【主な副作用】
    肝障害・末梢神経炎・皮膚反応を伴う過敏症

リファンピシン(RFP)

リファンピシン
(RFP)

  • 【形態】
    カプセル(色はメーカーによって違う)
  • 【主な副作用】
    肝障害・胃腸障害・血小板減少による出血傾向

ピラジナミド(PZA)

ピラジナミド
(PZA)

  • 【形態】
    粉薬
  • 【主な副作用】
    肝障害・関節痛・高尿酸血症

ストレプトマイシン(SM)

ストレプトマイシン
(SM)

  • 【形態】
    筋肉注射
  • 【主な副作用】
    平衡障害・聴力障害(耳鳴り)・口の周辺のしびれ

エタンブトール(EB)

エタンブトール
(EB)

  • 【形態】
    黄色い大きな錠剤
  • 【主な副作用】
    視力障害・末梢神経炎・皮疹

結核菌に「耐性」を作らせない!

再発しないように、薬剤耐性にならないために重要なことは、処方された薬を最後まできちんと服用することです。

不幸にもこの原則が徹底されず薬剤耐性になってしまった結核菌に感染すると、治療は困難をともないます。
そのために、保健所の保健師さん、病院の看護師さん、薬局の薬剤師さん、介護サービス施設のスタッフなど、地域の専門職の人たちが支援してくださる制度ができています。

抗結核薬の服用は副作用を伴うこともあるので、疑問があれば小さなことでも主治医に相談しましょう。
感染→発病→感染→・・・という連鎖が結核という感染症の広がるしくみです。それを断ち切るために、次のような手だてが行われます。

感染拡大の防止策

  • BCG接種

    BCG接種

    感染しても発病しないように免疫をつける。

  • 潜在性結核感染症治療

    潜在性結核感染症治療

    感染したことが分かった人は、発病を防ぐための薬を服用する。

  • 発見

    発見

    発病した人をなるべく早期に、健診や受診で発見し治療につなげる。

  • 治療

    治療

    発見した患者さんを化学療法で治し、感染源にならないよう、健康な生活を取り戻せるようにする。

一人ひとりの意識と行動が結核を制圧します

一人ひとりの意識と行動が
結核を制圧します

結核を制圧するためには、なによりも、皆さんに結核について正しい知識を持っていただくことがとても大切です。結核がどのようにして拡がるのか、どのようにして治すのかを理解し、定期的に健診を受ける、咳(せき)が長引くときは診察を受けるなど、結核対策は、皆さん一人ひとりの意識と行動にかかっているのです。

結核予防会で毎年作成している
「結核の常識」がここから閲覧できます。

パンフレット「結核の常識」